砥部焼とは
砥部焼の歴史
「砥部焼」とは、約240年の歴史を持つ愛媛発祥の焼き物です。四国で唯一の磁器の産地・伊予郡砥部町の陶石から生み出される砥部焼は、国指定の伝統工芸品のひとつ。
砥部地方には断層・中央構造線が通っており、古くは奈良・平安時代から砥石が採石されたと言われています。
江戸時代になると砥石の屑石から磁器を作り出す技術が生まれ、大洲藩のもとで砥部焼が発展。戦後は民芸運動の父・柳宗悦らによって、その手仕事の技術力が高く評価されました。
採石はかつて砥部各地で行われていましたが、現在では山間部・上尾峠エリアのみ。さらに採石されたもののうち、その10%程度しか白い磁器土にはならないと言われています。
全国的に採石量が減少している陶石ですが、ここ砥部地方は今も残る希少な産地のひとつ。愛媛の砥部焼は、産地の豊かな自然と共存しながら生み出されています。
特徴
陶石を粉砕した石の粉が主な原料。細かく砕いた石粉を、粘土状にしたものが磁器土です。この磁器土をろくろや石膏型などを使い成形。素焼き後に絵付けを施し、釉薬をかけ、約1200℃〜1300℃という高温で焼き締めます。
原料が石ということもあり粒子が細かいため、硬く割れにくいのが特徴。吸水性がなく表面の汚れが染み込みにくい性質で、電子レンジや食洗機に対応しているものが多いです。「手仕事のうつわ」と聞くと扱いづらいイメージですが、砥部焼は「普段使いしやすい食器」として長く愛されています。
形と紋様
砥部焼の代名詞と言われるのは、白磁に呉須(藍色)の紋様。唐草紋などの古典柄はもちろん、可憐な花柄やシャープな直線柄まで、そのバリエーションも多種多様です。
砥部焼のフォルムは、ぽってりと丸みを帯びた形が一般的。当窯先代の師匠から継承された「玉縁鉢(たまぶちばち)」がその代表例です。
フチ部分を折り返して丸く厚みを持たせた、欠けにくく汎用性を高くしたうつわ。この玉縁鉢は、現在では数軒の窯元でしか作られておらず、成形に高度な技術を必要とすることから、匠の技とも言われています。
一方で砥部焼の作り手は多様化が進み、伝統の枠にとらわれない若手作家や感性豊かな女性陶芸家も増えています。歴史を受け継ぎながらも、現代のライフスタイルに合ったうつわへ。砥部町内外にある約100軒の窯元は、日々進化を続けています。
うつわの特性
一般的に言われる「焼き物」とは主に陶器と磁器のことを指し、総称して陶磁器とも呼ばれています。
【陶器】
陶器(土もの)は陶土と呼ばれる粘土から作られており、約1000℃~1200℃で焼成されます。土の粒子が荒く磁器よりも焼成温度が低いため、割れやすい性質です。
素朴な見た目で、吸水性があるのが特徴。
<産地>益子焼・笠間焼・萩焼・薩摩焼など
磁器(石もの)は陶石を粉砕した石粉から作られており、1300℃前後で焼成されます。
土の粒子が細かく焼成温度が高いため、割れにくい性質です。
白い素地のものが多くやや冷たい印象で、吸水性がないのが特徴。
<産地>有田焼・波佐見焼・砥部焼・九谷焼など
【陶器と磁器の簡単な見分け方】
うつわの縁を指ではじいて、低くにぶい音が出ると陶器で、高い音が出ると磁器です。
※磁器でもヒビ割れているものは、にぶい音が出ます。